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  • 「青い空と白い雲」 第1話「木星沖海戦」(参考用)

  • 投稿者:管理者
 
ATZの原作品「青い空と白い雲」のフラガさんのレビューです。

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  • 80年代の夢、2010年の夢 フラガ

  • 投稿者:フラガ
  • 投稿日:2010年 9月 9日(木)23時21分39秒
 

レビュアーコメント

 だいたい私と作者の小林さんはほぼ同年代ですが、掲示板なんかではバカにされている「いい歳をしたヲタク中年」と呼ばれる世代ですね。「Zガンダム」高校時代の話題になりました。「ファースト」私もガンプラ組み立てました。「ゾック」とかでしたけどね。「Zガンダム」の最後で流れていく百式を見て、次の「ZZガンダム」ではシャアが復活するに違いない、それはそのはずと思ってテレビにかじりついていた世代です。

 本当のことを言うと、私は今のティーンやハイティーンの方々がこの当時のアニメをDVDなんかで見て「名作と思う」とか「好きになる」心境が分かるような気がします。掲示板なんかの意見をたまに見ますと、大きな大人も少なくないようですが、ティーンの方もいますよね。確かに、今見てみると「逆シャア」なんかは良くできたアニメだと思います。最近になってできた「ガンダムSEED」とか「ガンダム00」のコンピュータ作画に見慣れた目には(あれはあれですごいと思いますが)、あの当時のアニメは絵もそんなに悪くない上に、ダブルオーなどには無い、「何か血の通った」ような暖かさを感じます。まじめさもひたむきさも当時の作品の方が今よりも上です。それらが何もかもが数値化され、努力だけでは越えられない「壁」に向かい合って絶望している今の若い方には逆に新鮮なのかもしれません。「逆シャア」も「Zガンダム」もそういう見方なら決して悪い作品じゃなかった、そう言ってくれる若い世代の声は実は我々の励みにもなります。

 でも、我々は知っているんです、本当はもっとすごいことができたということを。

 最初の作品を作った時のクリエーター、私は1980年代で基本的な「アニメ」のノウハウは完成したと思いますが、当時は若く、熱い志を持ち、スタジオの隅でビール缶を片手に社会的不公正や不正義に怪気炎を挙げていた人たちも、作品がヒットし、社会的に裕福になるとずいぶん変わってしまいました。スポンサーの都合で仕事を切られる理不尽に怒り狂っていた彼らは、いつしか些細な理由で若いクリエイターを解雇する冷酷な管理職に変わっていきました。1980年代が頂点だったので、その後の彼らの放つ作品が決して評価が高かったとも興行的に成功だったとも言えません。でも、それ以前との違いは彼らが失敗の責任を他人のせいにできたことです。失敗の数は多かったので、いつしか社会正義に怒りを持っていた若い青年は、自己弁護と責任転嫁に汲々とする疲れた中年に変わっていきました。

 我々は目撃していたんです。理想を語る人間が、作品を通じ堕落し、続く世代を育てなかったという冷酷無残な事実を。

 この作者の方が以前に指摘していましたが、「ガンダム」は典型的な作品だったそうです。アニメーションの技術は「Zガンダム」が頂点で、後は進歩したのは機材だけで、演出や殺陣、脚本の技術は低下する一途だったと。「逆襲のシャア」悪い映画ではありませんが、以前の作品と比べると絵に精気がありません。モビルスーツの見せ方も迫力に欠けます。そして何より、シャアことクワトロ大尉が反乱を起こす理由が全然分かりません。作品を並べるだけで、これは分かってしまいます。

 もし、こんなロスが無かったらどうだろう。作者はきちんと説明していないようですが、たぶん、これがこの作品を成立させた大きな動機の一つです。作品のスケールは大きいです。構成も緻密で、時には社会性あるテーマさえ語っています。これはその技術があるなら、それに相応しい物語をというコンセプトで練られた作品です。そして、あの時代の冷酷な人物が、一夜の思いつきで考え出したような続編の屁理屈を、この作品はことごとく破ってしまいます。「ジオン公国」が存続していることなど好例ですね。1970年の物語を元に、現代流の解釈を加え、物語の可能性を極限まで追求した作品、これがこの作品の正体です。

 物語に分かりやすいテーマや予定調和が必要だという作劇上の理由については、作者はあまり考慮しているようには見えません。それでも、この物語の進行は読者の考え方を変えるだけの力を持っています。美辞麗句だけを並べた「可能性の物語」ではなく、読者に世界の見方、未来の見方を示しています。「可能性」は示されるものではなく、読者自身の手で掴むもの、そのための道具は提供した、後は任せたという作者の声が行間から聞こえてきます。

 私もこの作品を読むのは久しぶりですが、本当に楽しくレビューさせていただきました。改訂が進むにつれ、最初にこの作品を読んだときの私の感動が間違いではなかったことを実感としてつくづく感じています。


※「青い空と白い雲」改訂版は"An another tale of Z"と内容がやや異なります。より記述が多く、外語表記(英独)が多用されています。

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  • 1~4ページ「オープニング」

  • 投稿者:フラガ
  • 投稿日:2010年 9月 9日(木)23時30分14秒
 

副題は「これはマジメな話」

「プロローグ」

 このパートではこれが一番重要なテキストですね。残りは無くても良い(すいません小林さん)そのくらい作品に取って重要な内容です。続く「小林式いいかげん・前回のあらすじ」とは全然違うマジに書かれた文章です。あれはあれで独特のテイストなのですが。

 「宇宙世紀0092年、一年戦争から12年後の世界は激しく分裂していた。地球圏と太陽系は大戦を戦った地球連邦とジオン公国の二大勢力の他、大戦前後に独立した第三勢力とが乱立し、群雄割拠の時代にあった。」

 第1段落、この作品は建前上「機動戦士ガンダム」の続編ということで書かれているのですが、その辺を説明しています。「群雄割拠の時代」ですから、これは「Zガンダム」なんかじゃありません。「地球圏と太陽系は」とありますから、地球以外の世界も対象になっていますね。短い文章で端的に説明されています。

 「当時の文明は核動力をエネルギー源とするものであり、地球には不足しがちな燃料であるヘリウム3は木星を中心に産出されていた。この状況は一年戦争当時とそう変わってはいない。一年戦争では勝利した地球連邦であったが、こと外惑星においては支配権の確立に失敗し、最大の宇宙国家ジオン公国と自由コロニー同盟、そして無数の地域勢力が木星圏で覇を競っている。」

 第2段落、「ガンダム」は核融合エンジンで動くロボットでしたから、そのことを説明しています。核だろうと蒸気機関だろうと燃料は必要です。前作の「ガンダム」の燃料がどこから来ていたかを説明していますね。「一年戦争では勝利した地球連邦であったが、こと外惑星においては支配権の確立に失敗」というところで、ああ、ア・バオア・クーから先には行けなかったんだなと、これはテレビ作品を知っている人には飲み込める筋です。何せあの作品の連邦軍はハデにやられましたから。「ガンダム」も壊れたし、木星なんて無理だったんでしょう。

 「大戦に敗れたジオン公国は木星のプラント守備にかなりの規模の艦隊を派遣している。一方、宇宙国家のもう一方の雄である自由コロニー同盟系のアル・ファイサル・ヘリウム公社は木星で最大の採掘プラント群を維持しており、その守備のため同盟もまた艦隊を派遣していた。同盟は地球圏のサイド5「ルウム」を拠点とする宇宙都市国家連合であり、0083年に連邦から独立した新興国家である。その躍進はジオンと並ぶ宇宙国家の両雄として注目されている。木星における両勢力の激突はいわば不可避のものとしてあった。」

 第3段落、同盟が連邦から独立した国というのはテレビの内容から十分に想像付きますね。そして、サイド3まで侵されなかったジオンが木星に艦隊を派遣しているというのも、「機動戦士ガンダム」の内容から十分想像が付く話です。

 「そして、同盟軍の若き士官マシュマー・セロは、同盟軍木星派遣艦隊の指揮官として、木星の衛星ガニメデを基地とし、自由コロニー同盟の権益と市民の安全を守るため、邪悪な宇宙海賊、卑劣な密輸業者、そして宿敵のジオン木星艦隊と日夜戦っているのだ。」

 第4段落、ここが「ZZガンダム」を知っている方にはズッコける所で、「あのマシュマーが」なのですが、続く言葉で「日夜戦っているのだ」とか幼年向けヒーローっぽいことを書いていますから、「ああこれはあのズッコケマシュマーだな」という、作者は実はキャラの要素は残すつもりだと分かる場面です。だいたいこの小説、内容は結構本格的で、ガンダムなんかに依存しなくてもやっていけます。キャラまで変えてしまってはそもそも書く意味が無いわけですし、富野作品に対するアンチ・テーゼにもなりません。

 第5段落は良いと思いますが、「プロローグ」はこのように小林さんの作品の全ての要素を数百字足らずで表現している秀逸な文章です。他ではちょっとありませんね。

 1~4ページを解説していないじゃないかと言われるでしょうが、この部分ではここが一番大切なんです。残りは次でついでにやります。

 フラガです。

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  • 1~4ページ「オープニング」2

  • 投稿者:フラガ
  • 投稿日:2010年 9月 9日(木)23時31分10秒
 

副題「新規開店同盟屋」

 1~10ページは作品の2人の主役、マシュマーとハマーンの自己紹介です。あと、彼らを支える脇役が登場しますね。マーロウ艦長とかカーター参謀というのはその後も準主役的な地位です。グスマン艦長とヘルシング隊長は前回はそんなに出ていたキャラではありませんが、主役2人との因縁は強いと説明されたキャラでしたね。とりあえず、前回逃した1~4ページでやります。

 「人間の眼より遙かに鋭い目と記憶力を持つコンピュータが既に艦名まで照合を済ませている。」

 テクノロジーの解説ですね。この辺は今でも実用化しているか、あと一歩の技術だと思います。「大型戦艦(battlewagon)」という表現が良いですね。戦艦を表す言葉はいろいろあるのですが、「バトルワゴン」というのは戦記物などに時折見られる表現です。大型戦艦を現します。何となく厳つい感じがしませんか。

 「概して臨検(die Zollkontrolle)と称してガニメデにある基地『ヤーウェ』に連行され(1-3)」

 「ツォルコントローレ」というのは「臨検」ではなく「税関」という意味です。こういう原語表記の併記、実はPDF版という前回と今度の改訂版の間にある版がありまして、ここでは結構使われていました。これは結構深い言葉で、先ほど「プロローグ」の解説をしましたが、木星にはたぶんジオンの方が先に進出しているんでしょう、だから彼らは後からやってきた同盟の船から「関税ないし通行料」を取っているつもりだというのがニュアンスから分かるわけです。木星は広いですし、同盟もそんな金払ういわれはありませんから、戦争になるわけです。たぶんそうだろうというのは、以下の表現で分かります。

 「こういう場合、輸送船の乗員が殺されるということはあり得ない。ジオンもそこまではしない(1-3)。」

 「グワジン級が現在の進路で進めば、その先には同盟の輸送船団がある。インターセプト・コースに入られる前に、退けるなり沈めるなりする必要はあるだろう(1-3)。」

 このあたりのニュアンスはこの作品の場合、原語が読めなくても読み進むうちに分かってきます。マシュマーらの任務はあくまでもジオン側の「徴税活動」を妨害することでしか無く、ジオン軍を「撃滅」するとか、人類を「粛清」することでは無いわけです。

 これは余談ですが、前回のゲストブックとそれに付随する討論では作者の小林さんはこういう設定のアイディアを北方領土を巡るロシア海軍と日本の海上保安庁との駆け引きから得たそうです。あまり知られた話ではありませんが、「タンカー」を「漁船」に置き換えれば、何となくニュアンスが分かる人は多いのではないでしょうか。

 この話は結構「マジ」です。下手に茶化すと逆に面白くなくなります。素直に読んだ方が腑に落ちるでしょう。

 フラガです、続きます。

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  • 5~9ページ「ジオンの皇女」

  • 投稿者:フラガ
  • 投稿日:2010年 9月 9日(木)23時32分6秒
 

副題は「故障したプリンスロイヤル」

 マシュマー達の解説の後ですから、次は「これから通行料を取りに行く」と彼らに思われているジオン側、そう読まなくても良いと思いますが、ジオンの王女、ハマーンの解説です。

 「ハマーン・ザビ・ソド・カーン、ジオン公国首相マハラジャ・カーンの娘にして皇族であるザビ家の一員、しかも、皇位継承順位(die Erbfolge)第一位の姫君(die Prinzessin)だ(1-4)。」

 何かすごいですね、苗字に「ザビ」付いていますし、しかも継承1位ですから、彼女はジオンの皇太子です。何でそんな人が戦艦なんかに乗っているんでしょう?

 「小柄で細身の体に特注の金モールをあしらった将官服が凛々しい印象を与える。小さな頭に細くサラリとした赤髪が独特の髪型にセットされている。まるで人形のような完璧なスタイルの女性だ(1-4)。」

 スタイルも完璧、顔も美形、頭脳も優秀、非の付け所無いですね。先に出てきた同盟の方々なんかと比べると「ひええっ」といった感じです。どう見ても、こんな人が「徴税活動」なんかするようには見えませんが、読むと案の定「エンジン故障」で立ち往生のようです。センチュリーが壊れたガコさんみたいなものですね。戦艦グワジン、懐かしい艦名ですが、こんな船を十数年後も使っていて壊れないわけありません。物持ちの良さもさすが皇室、いや、これはプリンスロイヤルじゃなく戦艦ですよね。

 「モビルスーツ隊の訓練のためとはいえ、木星に近づきすぎたのだ(1-5)。」

 やっぱ違いましたよね、もっとマジメな目的で木星にいます。この人が先に出てきたような、「そこで保釈金(bail)の代わりに船とヘリウム3を没収(1-3)」なんてえげつないことするわけ無いです。ガコさんにそんなことやらせるわけ無いでしょう。そういう「汚れ仕事」をやるのはもっと別の種類の方々です。後で出てきます。

 * * * *

 そこで「木星のフリーウェイクラブ」会員の同盟の方々の登場となります。何やら荒っぽい計画を立てていますね。ガコさんピーンチといった感じです。

 「レールキャノンの初速は秒速8キロだが、木星の重力加速度を利用して加速し、これを4倍にする(1-7)。」

 おいおいと言った感じです。だからハマーン無害なんだってばと言っても聞く耳持たないようですね。この時点でグワバンが壊れていることは分かっているのですが、「後々のために」彼らはプリンスロイヤルを壊す計画を立てます。そして、面子も神々しいハマーンと比べると地べたを這っているような感じですね。

 「10年前のデラーズ戦争で同盟軍に投降して以降は同盟軍のパイロット(1-7)」

 「互いに親友を殺し合った一年戦争時代の因縁(1-8)」

 どう見てもハマーンとお付き合いできる階級の方々とは思えません。マシュマーとマーロウは「大学予備門(1-6)」なんか出ているようですから、どうも育ちが良さそうですが、後の面子はちょっと怪しげです。

 「必要とあらば敵艦乗員の救助を行うこと(1-8)。」

 やっぱりこれは「一年戦争」じゃありませんね。この無益な殺生はしないというスタイルは、何かと血生臭い他の作品と比べ、この作品が安心して読める理由になっています。同盟の物騒な作戦会議の後は故障したプリンスロイヤルに乗るハマーンのお話が再び始まります。モビルスーツ「リゲルグ」の解説もありますね。この辺は次で少し触れましょう。

 フラガです、続きます。

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  • 10~14ページ「同盟軍の攻撃」

  • 投稿者:フラガ
  • 投稿日:2010年 9月 9日(木)23時32分57秒
 

副題は「艦長の鑑」

 第1話は割と「マジ」な話ですから、変なツッコミは入れないで素直に読んだ方が良いと思います。「ハイグロウ少女」ハマーンの解説が少しあります。皇族である上に首相の娘なんですね。彼女が木星にいる理由も書いてあります。「武者修行」でした。

 「マハラジャの妻は前公王の妹であり、彼女自身も皇族としての礼遇を受けている(1-9)。」

 先ほど「皇太子」と書きましたが、この家族構成では彼女は直系じゃないですね。皇族ではあると思いますが、いわゆる皇室の相続というのはちょっと普通と違いますから、こういう位置の人が「継承一位」というのは前作の「機動戦士ガンダム」を引きずっています。ミネバ以外みんな死んじゃったじゃないですか。後で分かるのですが、この作品のジオン公王はミネバです。彼女が「それに次ぐ者」になっているのはミネバの跡継ぎではなく結果的という意味です。ミネバに子供が出来れば、彼女の継承権は大幅な後退を余儀なくされるでしょうね。さらに子供に子供ができれば、、

 前の作品ガンダムからですと、ミネバの歳は0093年で13歳、ハマーンは書いてある通り18歳ですね。常識的に考えて、彼女がジオン公王になる可能性は限りなくゼロに近いというのは、9ページの文章でも分かると思います。

 「マハラジャはハマーンを最初から後継者として育てた(1-9)。」

 これで分かりますね、彼女は皇太子としてではなく、ジオン首相になるべく育てられた女性だったわけです。だから実務能力を重視した教育を受けているわけですね。あと、純金紋様付きモビルスーツとか出てきますが、彼女のハイグロウな生活ぶりは別に良いでしょう、同盟軍の攻撃が始まっています。

 * * * *

 「グワジンより1,000キロ上空まで上昇し、弾みを付けた速力と木星の重力の相乗効果で時速20万キロにまで加速する(1-11)。」

 前のガンダムを知っていると狂気のような作戦ですね。

 「格納庫ではマシュマーが黒いパイロットスーツを着用して黒いヘルメットを被り、同じく黒い愛機『アライアンス』のコクピットに納まっている(1-11)。」

 黒はどうも彼のパーソナルカラーのようです。前回では彼の機体はGMⅡアライアンスという機体だったのですが、改訂版では単純に『アライアンス(同盟)』という意味です。同盟軍の機体ですから同盟号と、護衛艦もタイプ85(0085年式という意味)とか何か素っ気ないのですが、これも同盟の文化です。

 「全機射出を確認したマーロウ艦長は操舵手のバーナード少尉にさらなる加速を命じた(1-11)。」

 『レイキャビク』がちょっと普通以上の高性能艦だと分かる描写です。あと、『ブードゥ』という機体も登場しますね。名前からして性能悪そうです。次は彼らに襲われる戦艦グワバンの描写です。

 * * * *

 「マシュマーとかいう若造の艦か(1-14)」

 ハイグロウ少女ハマーンにはやはりそれなりの艦長が付いています。間違っても「元デラーズ」とか「互いに殺し合い」とか言うようなヤクザな履歴の人ではありません。グスマン艦長は軍人の鑑のような立派な艦長です。

 「自分なら他に奥の手を考える(1-13)。」

 このパートではほとんど彼が主役でしょうね。彼はマシュマーらのヤクザな追い剥ぎ作戦をある程度は読んでいます。その上で指示を出していくのですがいちいち的確で、艦船モデラーさんの前のレビューでも理にも叶っているようですね。先の作戦計画でのマシュマーらの攻撃方法の3つのうち2つまでを無傷で撃退してしまいます。

 あんまり突っ込める所の無いパートでしたが、アクション戦闘シーンとしては単純に読めば爽快感はあると思います。ここはそういう場所でしょうね。

 フラガです。あと二つやって寝ます。

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  • 15~19ページ「ハマーン出撃」

  • 投稿者:フラガ
  • 投稿日:2010年 9月 9日(木)23時33分34秒
 

副題は「やっぱり彼女は頭が良い」

 「ハマーン様が出るだと(1-16)?」

 前回のレビューでは確かハマーンのこの行動は「おバカ少女だ!」で終わってしまったのですが、今回読んでみて、いわゆる「ラノベ少女」を思い出しました。涼○ハ○ヒとかいろいろあるんですが、だいたい判で押したように「彼女は成績優秀で」と解説されるのですが、それに相応する頭の良さそうな行動をしないんですよね。そこが食い足りないと前から思っていて、最近ではこういう解説があっても枕詞くらいに思っていましたね。

 ハマーンの場合も冒頭で「これでもか」というほど「優秀」だという描写は作者はしているんですが、ラノベ慣れした私はそれだけじゃ説得されません。やっぱ「行動」で示してもらわなければ、それが分かるのがこのパートでのハマーンの出撃です。

 『貴公は同盟の攻撃がこれだけだと思うか? 我が『グワバン』に対して軽巡洋艦たった2隻での攻撃。無謀であろう。何か策があると見るべきだ(1-16)。』

 先のヤクザ同盟軍の作戦計画で3つの攻撃方法が提案されましたが、2つまではグスマン艦長に読まれてしまいました。同盟の軍艦はミサイルとモビルスーツを積んでいますから、それを使うだろうというのが艦長の読みだったのですが、ハマーンは3つ目の存在に薄々気づいています。

 これに気づいた時、前は「世間知らずのおバカ少女」だった彼女の印象が180度変わりましたね。「ホントに頭良いわハマーン」と、「お飾りではない」と作者は書いていますが、このパートでは彼女はそれを実地に示します。18~19ページの彼女の「読み」はラノベ少女とは一線を画するものです。ちゃんと理由があって、ピシッピシッといちばんスマートな方法を取っていくわけです。マシュマーに戦いを挑むにしても、計算づくです。普通に論理的に結論を導いていき、結果的に同盟軍の作戦の裏に近いところまで見抜いてしまうという、彼女の頭の良さをちゃんと書いたところはやっぱり涼○ハ○ヒとは全然違うものです。

 「証明」という言葉がありますが、この作品の優秀少女ハマーンの行動も一つ一つが「証明」できるものでしょうね。そういうものが本当の「頭の良さ」だと作者は言いたいのでしょう。邪推だと思いますが。

 この辺は本当にうまいと思いました。第1話なのですが、この同盟軍の行動をミステリーにしてハマーンの考え方を描いていく。ハマーンが何かモヤモヤしたものを抱えながらマシュマーと決闘してその謎を(読者は分かっていますが)解き明かそうとする描写は秀逸です。

 前回のレビューでここに気づいていれば、もう少し彼女をちゃんと書いて面白い内容にできたと反省しています。

 フラガです、次行きます。

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  • 20~24ページ「木星上空の決闘」

  • 投稿者:フラガ
  • 投稿日:2010年 9月 9日(木)23時34分31秒
 

副題は「チャンバラは愛」

 「戦闘でエネルギーを失えば、敵は母艦を救援に向かわせざるを得ない(1-19)。」

 見事な読みです、さすが秀才少女ハマーン、同盟軍の作戦のあざとさをちゃんと見抜いています。「仕掛けてみようか」、これも良い読みです。何てったって彼女の乗る機体は「リゲルグ」帝国特級彫金師の筋彫り入り超ゴージャス機体です、変造GMの同盟機に負けるわけがありません。14対1でもエネルギー不足の同盟機相手なら良い勝負ができるでしょう!

 しかし、彼女には誤算があった(1-8参照)。

 「元デラーズ」

 「仲間で殺し合い」

 こんな奴らが「仲間を助けよう」とか、「力を合わせてハマーン撃退」なんかするでしょうか? 案の定、彼らはマシュマー一人置いてフケてしまいます、後は頼んだぜ~♪ 薄情なり同盟軍、残された彼女は世間の荒波に揉まれるガコさんといった心境でしょうか。同盟軍の薄情さを見抜けなかったのが彼女の失敗でした。残ったのは冒頭でこれからいつも「我らがヒーロー」と書かれている目立ちたがり屋でカッコ付けマンのマシュマー、もはや秀才も戦略的意味も無いチャンバラが始まります。なお、ハマーンの母艦グスマン艦長は完全に置き去り喰ってます(1-21)。

 * * * *

 「馬力のある機体で攻撃するときは上昇しないと、降下なら、この『アライアンス』でも十分ついていける。実戦経験は乏しいようだな(1-22)。」

 いちいちキザったらしいですね、しかし、彼の乗るのはカローラのような安物の改造GM、何か余裕かましていますが、実はハマーンに遊ばれていることに気づいていません。

 「やられてばかりだと思うなよ! 同盟の犬(1-22)!」

 以後52話続くハマーンとマシュマーの腐れ縁のこれが始まりです。「同盟の犬!」良い表現ですねえ、私も犬になりたい(フラガ)。チャンバラ~♪ チャンバラ~♪ 時々ビーム♪ しかし対ビームシールド(昔の作品で言うバリヤー)を持つリゲルグはこんなことでは落ちません、完全に余裕ですね。

 「、、どこにお前を助ける者がいる(1-23)?」

 だからマシュマー助けになんか来ないんだってば、ガコさんの善意の世界とはかけ離れた、どこまでも薄情な同盟軍です。そうこうしているうちにマシュマーの3番目の作戦、たぶんいちばん荒っぽい、急降下する「レイキャビク」がやってきます。

 「来たなマーロウ、目にもの見せてやれ(You'll show them.)(1-23)。」

 やったという感じのマシュマーですが、先の作戦会議で説明していた狂気の急降下爆撃、果たして成功するのでしょうか?

 * * * *

 「バーナード、操縦系を艦長席に渡せ。ハリス、測距レーダー作動用意。測的後、解析値を主砲コントロールに入力しろ(1-24)。」

 類は友を呼ぶ、隊長も隊長なら艦長も艦長、「時速20万キロの急降下作戦」、マシュマーの「大学予備門時代の」友人とかいうマーロウ艦長、もう完全にノリノリです。自分でジョイスティック操作して主砲の引き金引いています。ゲストブックで付けられた仇名は「サド艦長(いろいろありまして)」、目標は戦艦グワバン。

 「こんな戦い方は木星圏以外、どこでもできまい(1-24)。」

 ある意味、作者も言いたかったことでしょうね。こんなおバカな作戦地球じゃできっこありません。木星だからできる、サディストの彼だからできる、でも二度とやってくれるなダダーン! ついに戦艦レイキャビクの主砲が火を噴きます。

 次はいよいよクライマックスです。

 フラガです。

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  • 25~30ページ「戦艦グワバンの最期」

  • 投稿者:フラガ
  • 投稿日:2010年 9月 9日(木)23時36分15秒
 

副題は「クライマックス」

 この辺は展開早いですね。一気に決着が着く感じです。まずは急降下する「レイキャビク」を発見したハマーン。

 「レールキャノンで砲撃して、反航してもう一撃。そして前方の会合ポイントでモビルスーツを収容する。超高速で攻撃するのは被弾を避けるためと、もう一つはレールキャノンに弾みをつけるため(1-25)。」

 ハマーンはずっと考えていたからすぐ分かったんでしょうね。普通こんな目(20万キロレールキャノン)に遭わされたら何が何だか分かりません。リゲルグで出撃した彼女は答えまであと一歩の所まで来ていたのですが、マシュマーに絡まれたせいで力及ばずでした。残念!

 「もらった!」

 だからあんたいいんだってば(>マシュマー)、へっぽこGMのビームサーベルを突き刺され、ハマーンはこれで退場です。

 * * * *

 2番目はグスマン艦長、サド艦長の卑怯技が功を奏したようで(というかほとんど反則)、戦艦グワバンはあっと言う間に沈んでしまいます。

 「総員退艦せよ(Verlassen Sie Schiff !)!」

 「戦艦はもういい(Ignore that !)! チペを撃て(Shoot them!)!」

 「フィアラッセンジーシッフ」でしょうか、英語で言えば「アバンダンシップ」でしょうね。この辺本当はどう言うのか私も良く分かりません。いずれにしても大戦艦グワバンはもうこういう状態です。サド艦長はついでに護衛艦までやっつけていますが、1隻は残したようです。武士の情けでしょうね。この辺26~27ページ。

 * * * *

 第3幕目はマシュマーを置いて帰っていった薄情な同盟軍の奴らです。元デラーズの隊長がひょっとしたら見捨てられるかもしれんと怯えています。※ATZでは割愛されています。

 「来たな、『レイキャビク(die Reykjavik)』(1-28)。」

 どうやら助けてもらったようですが、これ、もし「レイキャビク」が撃墜されたら彼ら全員墜落なわけで、「板子一枚下は地獄」ヤクザ社会同盟軍のシノギの厳しさを感じさせます。会話の様子見るに、どうも彼らマシュマー助ける気は微塵も無さそうですね。

 * * * *

 ラストはグスマン艦長です。ハマーンの召使い艦長ですが、何か渋いですね。一人で彼の世界に浸っています。

 「「艦と運命を共にする」、ジオン軍の慣習に、このゲオルギー・フォン・グスマン三世少将も従うというわけだ(1-29)。」

 いや、それは完全にあんたの趣味。ハマーンそんなこと勧めてないから、次の話で分かります。

 「グスマンは安物のジオン煙草を一本吹かした。誰かは知らないが、こういうものを艦橋に隠し持っていた者がいたらしい。」

 隠し持っていた人はいたかもしれませんが、それを見つけるあんたもすごい。

 「ハマーンの教育係に任命されて以来、グスマンは禁煙をしていた。」

 艦長室に「禁煙」とか張り紙してあったり、ニコレットとかパイポとか置いていたんでしょうか、そんなことより喫煙者を「娘の教育係」に任命したマハラジャの度胸に感じ入るものがあります。戦艦アサルムの話とか出ていますが、完全に彼の世界に浸りきっていますね。そんな彼を乗せて、戦艦グワバンは徐々に沈んでいきます。いやだなあ、すぐに沈んでくれれば、艦長同様、戦艦もナルシストだったようです。

 * * * *

 普通のこういう小説なら、たぶんここで終わりでしょうね。ハマーンはマシュマーに敗れ、大戦艦グワバンは艦長と一緒に沈み、イェイ! やったぜ同盟軍、えらいぞマシュマー! じゃないかと思いますが、小林さんの作品は、ちょっと事情が違うようです。

 ラスト行きます。

 フラガです。

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  • 31~ラスト「救助活動」

  • 投稿者:フラガ
  • 投稿日:2010年 9月 9日(木)23時37分5秒
 

副題は「後片づけはちゃんとしましょう」

 『こちら、自由コロニー同盟宇宙艦隊所属、軽巡『ホープ』。艦長のバニスだ。ジオン艦隊『タウベ』応答されたし、、こちら巡洋艦『ホープ』、、(1-30)』

 実は私は好きなシーンですね。戦いが終わってジオン艦隊の乗員を救助に行くバニス艦長も良いですが、相手のタケイ艦長もいい味だしてます。「昨日の敵は今日の友」という感じで逃げる連合軍をバキュンバキュンと撃つようなガンダムSEEDみたいな陰湿さがありませんね。

 「タケイは流暢な連邦公用語で『ホープ』に礼を言った。」

 この作品独自の設定、ジオン公国とコロニー同盟は言葉が違うというのがハッキリするのもこの場面です。あと、この台詞でどうもこういうことはいつもやっているらしいと分かります。

 「本艦のデラノ・ダンカン上等兵曹から貴艦にメッセージがある。デラノ上等兵曹はヒマリア沖海戦で貴艦に救助された。今度は自分が救助する番だと言っている(1-30)。」

 この辺、何か安心するんですよねえ、この二人の謀議で「武士道とは死ぬことと見つけたり」の権化のようなグスマン艦長の救出が決まってしまいます。

 「艦と運命を共にするという考えらしいが、できれば回収してやってほしい(タケイ)。」

 部下に裏切られてますよグスマンさん、グスマン式死の美学はどうもジオン軍でも少数派のようだったようです。「タウベ」艦長タケイさんは「ここを右に曲がってほれあっち」てな感じでグスマンの居場所まで同盟軍に教えてしまいます。自分で助けないのはたぶん後でいろいろ言われるからでしょうね。そして同盟軍がグスマン救助(余計なお世話)に向かいます。

 * * * *

 『武器を捨てろ(Leg das Gewehr sofort hin !)! 救助する。』

 救助したがりはもう一人いました。墜落したハマーンを救助に向かうマシュマー、ま、この状況じゃ助けないとヒロイン死んじゃいますからね、作者の命令で木星に降下していきます。しかしジオンの方々はいつもそうなんですが、彼女宇宙服着ていません。リゲルグのハッチまで着たマシュマーは(女っていつもそうなんですが)「ハマーンの着せ替えタイム」に何分も付き合わされることになります。

 「その後10分待ち(1-32)、」

 木星に墜落している機体で、そりゃまずいんじゃないですか、着替えタイムのハマーンに焦るマシュマーです。これも女性じゃ良くあることだと思うのですが、ハマーンの着替えタイムが長すぎて彼は母艦に帰れなくなってしまいます。ま、いいか。

 「酸素発生装置がやられていたというのに、煙草を吸っていたのか(1-34)。」

 * * * *

 で、ラストですね。これも私の好きなシーンです。酸素が尽きた戦艦グワバン(大半はグスマンの喫煙のせい)で、同盟軍医療班の方々がグスマン艦長を発見するシーンです。ヘンドリックス軍医大尉のこの台詞が良いです。

 「本人も生きる気は無かっただろうさ。しかし、我々は救助が任務だ。助けられる命ならば助けるのが我々の仕事だ(1-34)。」

 「死ぬのが趣味」なんて生き方はやっぱり人の迷惑ですよね。淡々としたプロらしさが良いです。敵も味方も無い、「命」だから助けるんだというヒューマニズムはこのシーン、あって良かったと思えるものです。そして戦艦グワバン

 「戦艦『グワバン』は、主が艦を離れると、崩れるように艦体を垂直に傾け、木星のガスの海に永遠に消えていった。」

 戦艦グワバンの「主(あるじ)」とはガルマザビでもなくハマーンでもなく、グスマン艦長だったんですね。主人が救助されるのを見届けてから、崩れるように木星に墜落していく戦艦グワバン、何やら艦に意志があるようで、何だか荘重な感じがします。

 以上で第1話は終わりです。他に気づいたことがあったらまた書きます。

 フラガでした!

http://www.geocities.jp/kakito7000/index.html



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